狩猟の魅力 その3|ジビエを楽しめる
CHARM OF HUNTING / 03

自分の手で獲り、
自分の手で捌き、
自分の舌で味わう。

命と向き合い、食の原点に立ち返る。スーパーの棚に並ぶ肉とは根本的に違う——ジビエという体験が、食べることの意味を問い直させてくれる。

野生の旨み 自然の中で育った獲物の肉は、飼育肉とは異なる深みがある
フランスの貴族料理から ジビエは欧州の食文化では古くから貴重な食材として扱われてきた
フードロスゼロへ 捕獲した命を無駄なく利用することは、SDGsとも深く結びついている

「いただきます」の言葉が、
こんなにも重かった。

食べることは生きることだ。しかし現代人の多くは、その繋がりを実感できないまま食卓に座る。狩猟は「食べる」という行為をその根っこから体験させてくれる。命に向き合い、技術を磨き、食卓に自分の汗と努力を乗せる——その一連の体験が、食に対する感覚をまるごと変えてしまう。本章では、ジビエという喜びを3つの角度から届けたい。

THEME 01

命に向き合う 命の重みを実感できる

初めて獲物にとどめを刺した瞬間、多くのハンターが「言葉にできない感覚」を覚えると語る。それは後ろめたさではなく、命をいただくことへの本能的な畏敬だ。毎日食べている肉も、かつては生きていた命だ——狩猟はその当たり前の事実を、頭ではなく体で理解させてくれる。

農林水産省が推進するジビエ利用の理念にも「捕獲した鳥獣の命を無駄にしない」という考え方が根本にある。捕獲して、捌いて、食べる。この一連の行為の中に、「命をいただいている」という感謝が自然と生まれてくる。食事の前に手を合わせる「いただきます」という言葉が、初めて本当の意味を持つ瞬間だ。

命に向き合った人間だけが知る、感謝の味がある。
THEME 02

食の本質へ 食の原点に触れる

ジビエとはフランス語で「狩猟によって得られた野生鳥獣の肉」を意味する。人類にとって食肉とは本来、野生動物を狩猟して得るものだった。農業が始まり、家畜化が進んだ後も、フランスをはじめとする欧州では王侯貴族がジビエを最高の美食として扱い続けた。その文化が今も生き続けているのは、野生動物の肉が持つ飼育肉とは異なる深い旨みと、食文化としての誇りゆえだ。

日本でも近年、ジビエへの関心が高まっている。シカやイノシシの肉は、低脂肪・高たんぱくで鉄分が豊富という栄養面での優位性が知られ、飲食店や学校給食での導入も増えている。自分で獲った獲物を自分で調理して食べるとき、人は食の原点——命と土地と自分の手がつながる感覚——に触れることができる。

食べることの意味を、体の芯から問い直させてくれる。
THEME 03

職人の技術 解体スキルが身につく

解体とは、命から食材をつくる技術だ。骨の構造を理解し、関節の位置を把握し、刃の角度を調整しながら肉を部位ごとに切り分けていく——この作業には、料理とも違う種類の集中力と技術が必要だ。初めての解体は、ぎこちなく、時間もかかる。しかし回を重ねるうちに、動物の体のつくりが自然と頭に入ってくる。

解体スキルは一度覚えれば一生使える。捌いた肉の質——ストレスなく素早く処理された肉か、そうでないか——は、食べた人に伝わる。丁寧に解体されたシカのロースは、プロの料理人からも「近江牛より美味しい」と評価されることがある(岩手県大槌町のジビエ体験プログラム参加者の証言より)。技術の習熟そのものが、美味さへの直接の投資だ。

うまく捌けるようになるほど、肉が美味くなる。

自分で獲って、自分で捌いて、自分で料理して食べる。その一皿には、何ヶ月もの努力と、山の空気と、命への敬意が全部入っている。スーパーで買う肉とは、全く別の食べ物だ。

さあ、山へ。
あなたの狩猟が始まる。

自然と向き合い、社会の役に立ち、命に感謝して食べる——これらすべてが、狩猟という一つの行為の中に詰まっている。次の一歩を踏み出すなら、今がその時だ。