趣味が、誰かの「助け」に
なれる時代。
全国の農作物被害は年間188億円。農家の苦しみ、人的被害、壊れゆく生態系——ハンターはその最前線に立ち、地域を守る存在だ。狩猟は「趣味」であり「社会貢献」でもある、稀有な営みだ。
(令和6年度・農林水産省)
人的被害者数(環境省速報値)
回答した自治体の割合(総務省)
ハンターがいなければ、
守れないものがある
ハンターの減少と高齢化は、社会問題として認知され始めている。農家は獣に田畑を荒らされ続け、山際の集落では野生動物との距離が縮まっている。そして森では、食物連鎖の均衡が崩れつつある。狩猟という行為は、これらの課題と正面から向き合う手段だ。本章では、ハンターが地域と自然にどう貢献できるかを、3つの視点から掘り下げたい。
農業を守る 農業被害を減らす
農林水産省のデータによると、令和6年度の野生鳥獣による全国の農作物被害額は約188億円にのぼる。シカとイノシシだけで全体の約65%を占め、農家は毎年、育てた作物を獣に食い荒らされる痛みを繰り返している。数字の冷たさの向こうに、誰かの一年分の苦労がある。
ハンターが地域に入り、適切な捕獲活動を行うことで、この被害は確実に減らせる。実際に、狩猟者が積極的に活動している地域では被害面積の減少が報告されている。自分が捕ったイノシシ1頭が、隣村の農家の米1反分を守るかもしれない——そういうリアルな手応えが、狩猟を続ける動機になるハンターは多い。
命を守る 人間への被害を減らす
クマによる人的被害は近年急増しており、2025年度4〜9月だけで被害者数108人、死者3人という深刻な数字が環境省から報告されている。かつて「山の動物」だったクマやイノシシは今、住宅地や農道に現れ、人の命を脅かす存在になっている。この現実から目を背けることは、もうできない。
2025年9月には改正鳥獣保護管理法が施行され、市町村長の判断でハンターが市街地での緊急銃猟を実施できる「緊急銃猟制度」が創設された。ハンターはいま、地域の安全を守る公的な役割を担う存在へと変わりつつある。「趣味のハンター」が「地域を守るハンター」になる——この変化を、今この瞬間も社会は求めている。
自然を守る 生態系バランスを守る
野生動物の個体数が増えすぎると、何が起きるか。シカは森の下草を食い尽くし、木の皮を剥ぎ、土壌侵食を引き起こす。結果、花も鳥も、多様な生き物が共存していた豊かな森が崩れていく。これは「動物が増えて良かった」という話では決してない。生態系は均衡によって成り立つ繊細な仕組みだ。
狩猟は「動物を減らす行為」ではなく「自然のバランスを保つ行為」だ。適切な個体数管理が行われることで、植生が回復し、他の野生生物も戻ってくる。ハンターは、山の管理者の一人として、生態系を未来につなぐ役割を担っている。自然を愛するからこそ、狩猟をするという選択がある。
農家の人に「ありがとう」と言われた日、初めて自分がハンターである意味をはっきりと感じた。山の中の充実感とは、また違う喜びだった。
そして最後に、
美味しい理由がある。
社会への貢献を実感したその先に、もう一つの深い喜びがある。自分の手で獲り、捌き、食べる——ジビエという食体験が教えてくれること。
