2026年クマは増えるのか減るのか-ブナの実豊作予測とハンターが知るべきこと
管理者より
2025年は、本当にひどい年だった。環境省の集計では4月から9月だけで全国の人身被害が108人に達し、死者は過去最悪のペースで増えた。秋田や岩手では市街地への出没が相次ぎ、「クマ」という言葉がニュースから消えない日はなかった。狩猟者として山に入る立場から見ると、あの年のクマは明らかに行動が変わっていた。ゴミ置き場に慣れた個体、人を恐れない個体、夜中でも商業施設近くをうろつく個体──そういう話が、あちこちから入ってきた。では2026年はどうなるのか。ブナ豊作の予測が出ているいま、それを正しく読むことがハンターにとって非常に重要だ。
初めに
秋田県林業研究研修センターの調査によれば、2026年のブナの実は「豊作」の見通しとされている。ブナの実が豊作なら、クマは山でたっぷりエサを食べられる。結果として人里への出没は減るだろう──と単純に考えていいのか。そうではない。岩手大学の研究者は「2026年はクマの行動がおとなしくなる可能性がある」としつつも、「春先の早期覚醒や、すでに人慣れした個体については注意が必要」と指摘する。この記事では、ブナと出没の関係を整理したうえで、ハンターが現場で本当に使える視点を届ける。
PT1:なぜブナの実がクマを動かすのか──「豊凶サイクル」を知る
クマにとってブナの実(堅果類)は、冬眠前の秋に脂肪を蓄えるための最重要食料だ。特にツキノワグマは、秋の採食期(ハイパーファジア)に大量の脂肪を蓄えないと冬を越せない。そのため、ブナの実が少ない年は食料を求めて行動範囲が広がり、人里や農地に出没する確率が跳ね上がる。
2023年
ブナ大凶作
クマ大量出没
過去最多被害
2024年ブナ
並作〜不作
引き続き多い
出没・被害
2025年
ブナ大凶作
被害過去最悪
230人以上被害
2026年
ブナ豊作予測
出没減少の
可能性あり
2027年
凶作の
可能性大
⚠️ 要注意
日本クマネットワークの研究によれば、2000年以降はブナ科堅果(ドングリ)の不作年に大量出没が発生するようになり、かつその規模が増加しているという。特に東北5県のデータでは、ブナの豊凶指数と有害駆除数(=出没数)の相関が高い傾向にある。2023年は2000年以降で最も実なりが悪い大凶作だったため、あれだけ大規模な出没につながったのだ。
そして2025年も再びブナ大凶作となり、同年の群馬県の豊凶調査ではクリ・ミズキが不作、ミズナラ・コナラが凶作、ブナが大凶作という記録的な結果となった。これが2025年の記録的な被害につながったわけだ。こうした「2年に1回程度の凶作サイクル」こそが、最大の出没要因だと理解しておく必要がある。
📰 2026年ブナ豊凶予報(秋田魁新報、2025年12月)
秋田県林業研究研修センターが独自調査に基づき「2026年ブナ豊凶予報」を発表。県内5か所の調査地点のうち4か所で「豊作」、残る1か所も「並作」の見通しとなった。岩手大学准教授の山内貴義氏は「ブナの実などのドングリが大凶作だった2025年から一転、2026年はかなり改善されると予想されており、人里への出没は少なくなるか、まったく出てこないこともありえる」と指摘している。ただし同センターの環境経営部長は「2027年はまた凶作になる可能性が高い。1年の猶予にできる対策を進める必要がある」と警鐘を鳴らしている。
PT2:「豊作=安全」ではない──2026年に潜む3つのリスク
ブナが豊作なら出没は減る。これは大きな傾向として正しいが、「だから今年は安全」とは決して言えない。2026年に潜む3つのリスクを理解しておかないと、山に入るときに足元をすくわれる。
リスク①:春先の「早期覚醒」問題
2025年は暖冬傾向が続き、冬眠からの覚醒が早まった個体が増えた。岩手大学の山内氏によれば「暖冬となって気温が高くなると冬眠から覚めるのが早まることがある。3月以降は注意が必要」だという。覚醒直後の春の山にはまだ新芽などの食料がほとんどない。そのため、4月頃はゴミ集積所や人里の食料を狙って一時的に出没する可能性がある。2026年4月時点で、山梨県ですでにクマの目撃情報が報告されており、これはまさにその動きの表れだ。5月に緑が芽吹けば山に戻ると考えられるが、それまでの期間は油断禁物だ。
リスク②:「人慣れ個体」は豊凶と関係ない
2025年に最も深刻だったのは、ブナ凶作だけでは説明できない「市街地への積極的出没」だった。スーパーへの侵入、住宅の倉庫に保管米を狙って入った個体、ペットを捕食した個体──これらはすでにエサを求める行動パターンが変化した「アーバンベア(都市型クマ)」だ。日本自然保護協会(NACS-J)の分析では、人慣れして人を恐れないクマの出現が、人身被害増加の重要因のひとつになっているとしている。こうした個体の行動はブナの豊凶とは切り離して考える必要がある。
リスク③:分布域の拡大は止まっていない
日本自然保護協会によれば、クマ類の分布域は過去40年間で約2倍に拡大している。ヒグマは過去30年で推定生息数が倍増し、ツキノワグマも兵庫県では年率15%の増加が確認されている。豊作の年に出没が落ち着いても、その間に個体数は増え続けており、翌年の凶作が来たときのインパクトはさらに大きくなる。2027年は凶作になる可能性が高いと予測されており、2026年の「安定」を安心と勘違いすると、翌年に大きな被害が出ることになる。
| リスク要因 | 2026年の状況 | ハンターへの影響度 |
|---|---|---|
| ブナ凶作による出没 | 豊作予測で低下見込み | 比較的安定 |
| 春先の早期覚醒個体 | 3〜4月は注意が必要 | 春猟・山菜採りに注意 |
| 人慣れ・アーバンベア | 豊凶関係なく継続リスク | 常時注意が必要 |
| 分布域・個体数の増加 | 拡大傾向は継続 | 中長期リスク増大 |
| 2027年凶作の予兆 | 1年後の大量出没リスクあり | 来年への備えが必要 |
Pt3:変わる制度、変わる現場──2025年施行の「緊急銃猟」とハンターの役割
2025年9月1日に改正鳥獣保護管理法が施行され、「緊急銃猟制度」が始まった。従来、市街地での猟銃使用は警察官の同行が条件とされていたが、改正によってヒグマ・ツキノワグマ・イノシシの3種を「危険鳥獣」として指定し、市区町村長の判断で市街地や人の生活圏での緊急の銃器使用が可能になった。
この制度変更は、ハンターの現場にも変化をもたらしつつある。これまでは「クマが出ても行政が動くまで待つしかない」という状況が多かったが、今後は自治体からの要請に応じてより迅速に現場に入れる体制になる。ただし、クマ対応ができるハンターは想像以上に少ない。
なぜか。クマを確実に仕留めるには、通常の散弾銃では力不足な場面もあり、スラッグ弾や場合によってはライフルが必要になる。ライフル銃は散弾銃を10年以上所持しないと許可が下りない。しかも、クマの行動パターンは地域ごとに異なり、数年かけてその地の山を知らないと対応しきれない。Yahoo!ニュースの専門家記事(2026年2月)でもその点が指摘されており、「地域外から赴任したガバメントハンターは地元のベテランと同行して学ぶ期間が必要」と述べられている。
現場から
2025年の出没の多さには、正直なところ怖さを感じた。自分の猟場でも、これまで痕跡さえ見なかった場所でクマの爪痕が木に残っているのを見つけたのは秋のことだった。普段シカを狙って入る谷筋に、なんとも言えない緊張感が走った。あの経験から、出猟前に必ず地域の目撃情報を確認する習慣に切り替えた。豊作の年だとしても、クマへの警戒は変えていない。
PT4:管理者Tの視点──ハンターとして山に入るとき、今年変えたこと
ここからは少し個人的な話をさせてほしい。狩猟を始めて何年かが経ち、山での動物の気配にはある程度慣れてきた。しかし2025年以降、クマに対する感覚が変わったのは間違いない。
まず出猟前に必ずやるようになったのは、「クマダス」(環境省のツキノワグマ等情報マップシステム)や自治体の出没情報ページを確認することだ。1週間以内に自分の猟場近辺でクマの目撃情報が入っていれば、その日は別の場所か別の行動パターンを選ぶ。これは面倒ではなく、もはや出猟前のルーティンになった。
現場から
クマスプレー(熊撃退スプレー)は以前から持っていたが、正直なところ「お守り」程度の意識しかなかった。それが2025年を経て、今は常に取り出しやすいベルトホルダーに装着するようになった。対クマに有効とされる製品選定も改めて調べ、有効距離や噴射時間を確認した上で選び直した。一つ変えるだけで気持ちの持ちようが全然違う。笑われるかもしれないが、それくらい2025年のクマは印象に残っている。
読者のハンターに特に伝えたいのは、「豊作の年だからリスクが低い」ではなく、「豊作の年だからこそ準備できる」という考え方だ。出没が比較的落ち着いていれば、地元のクマの行動パターンをじっくり観察できる。猟友会や地元の獣害対策担当者と情報交換しやすい雰囲気もある。2027年の凶作に備えて、この1年を「クマを知る年」にしてほしい。
✅ 出猟前に今すぐ始められる3つの習慣
まず出猟の前日に「クマダス」または自治体の出没情報サイトで直近1〜2週間の目撃状況を確認する。次に、クマスプレーを取り出しやすいホルダーに常時装着し、使用方法を定期的に確認しておく。そして薄明薄暮の時間帯(日の出直後と日没前後)は特に警戒を高め、できれば単独行動を避ける。
⚠️ 春猟・山菜採りシーズンは特に要注意
冬眠明けの早春(3〜5月)は山に食料がまだ少なく、クマが人里近くに一時的に出没しやすい時期だ。GW期間中のクマ出没件数は2019年の43件から2025年の379件と急増しており、豊作年でも春先は別の話だと認識しておく必要がある。
まとめ──「今年は安心」は危険な思い込みだ
2026年のブナ豊作予測は、確かにひとつの朗報だ。2025年のような記録的な大量出没は、統計的に繰り返される可能性は低い。しかしそれは「安全な年になった」ということではない。
春先の早期覚醒個体、人慣れしたアーバンベア、そして拡大し続ける分布域と個体数——これらのリスクは豊凶サイクルとは独立して存在する。しかも2027年には再び凶作が来る可能性が高いと専門家は指摘している。
豊作の今年だからこそ、出没情報の確認を習慣化し、クマスプレーを見直し、地域のクマの動向を観察できる。ハンターとして山に入る以上、この1年を「備える年」として使ってほしい。
🐻 豊作の年にこそ、準備する。それがハンターの本当の賢さだ。
参考・出典
- 女性セブン「2026年のブナの実は豊作の予測」(岩手大学准教授・山内貴義氏のコメント、女性セブン2026年1月8・15日号)https://news.yahoo.co.jp/articles/61b09b801c6b8394d3682f092d79b74174f0ab40
- 秋田魁新報「ブナの豊凶『1年おき』 森林環境変化に対応を クマが棲む街で第4部(4)」(2025年12月)https://www.sakigake.jp/news/article/20251220AK0008/
- 日本自然保護協会(NACS-J)「2025年のクマによる人身被害の増加とその対応について」(2025年12月2日)https://www.nacsj.or.jp/statement/58609/
- 日本クマネットワーク「2023年度のクマ大量出没と人身被害シンポジウム報告書」(2024年)
- 群馬県「令和7年度堅果類豊凶調査の結果とクマの秋期出没予測等」https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/723579.html
- 環境省「クマに関する各種情報・取組(令和7年度クマによる死亡事故件数・緊急銃猟実施状況)」https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html
- JBPress「過去最悪のクマ被害とハンター不足 対策の切り札として期待される『ガバメントハンター』とは」(2025年11月)https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/91496
- Yahoo!ニュース専門家「クマ出没に備えるガバメントハンターについて考える」(田中淳夫、2026年2月)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0d8433fc595c31093a431bd05b05d4650ebe54ef
- クママップ「熊出没マップ2026年 – 全国129,298件」https://kumamap.com/ja
- 環境省「クマ類の出没対応マニュアル(改定版)」(令和3年3月)
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