猟期が終わっても猟場に入れる──有害鳥獣捕獲許可の取り方と、申請で絶対やってはいけないミス
管理者より
猟期が終わったとき、いつも少し物足りない気持ちになる。山はまだあのままで、農家の畑にはイノシシが出続けているのに、自分は指をくわえて見ているしかないのか──そう感じた時期がある。でも実際には、猟期が終わってからでも動ける仕組みがある。有害鳥獣捕獲許可を使えば、年中を通じて農家や地域のために働ける。ただ、申請の手続きが「よくわからない」という声を仲間から本当によく聞く。怖い話ではないが、間違えると違法になる部分もある。この記事でまとめて解説する。
はじめに
鳥獣保護管理法では、猟期外に野生鳥獣を捕獲するには「有害鳥獣捕獲許可」が必要だ。農家の被害を受けた土地での捕獲、自治体が主体となる有害駆除活動への参加、いずれも許可なしでは1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になりうる。怖い話のように聞こえるかもしれないが、裏を返せば「手続きさえ踏めば猟期外もしっかり動ける」ということだ。申請に必要な書類、窓口の場所、注意すべきタイムラグ、そして現場でしか気づかない落とし穴まで、一通り整理する。
Pt1:まず「誰が申請するのか」を整理する──主体の理解が全ての前提
有害鳥獣捕獲許可を理解する上で最初につまずくのが「誰が申請するのか」という点だ。ここを勘違いしたまま手続きに進むと、書類が受け付けられないことがある。
捕獲許可対象者は、被害を受けているご本人のほか、被害を受けている方から捕獲の依頼を受けた方も含まれる。つまり申請の主体は大きく2パターンある。ひとつは被害を受けた農家や土地所有者が自ら申請するケース。もうひとつは農家や自治体から依頼を受けたハンターが、「依頼された者」として申請に加わるケースだ。後者の場合は「有害鳥獣捕獲依頼書」という書類が申請書に添付され、被害を受けた側がハンターに捕獲を依頼したことを証明する形になる。
重要なのは、ハンターが勝手に「農家に頼まれたから」という事実だけを根拠に、単独で許可申請することはできないという点だ。許可の権限者は、環境大臣(国指定鳥獣保護区内・希少鳥獣等)と都道府県知事(それ以外)に分かれており、多くの都道府県では捕獲許可権限の一部を市区町村長に移譲している。つまり窓口は原則として市区町村の農林水産担当または環境担当窓口になることが多い。
📌 申請主体の2パターンを理解する
・パターンA(農家・被害者が自ら申請):被害を受けた農家本人が主体となって申請書を提出する。自分でわなを設置する場合にもこの形が取られることがある。
・パターンB(ハンターが依頼を受けて申請):農家がハンターに依頼し、ハンターが「依頼を受けた捕獲従事者」として申請に加わる。この場合「有害鳥獣捕獲依頼書」が必要になる。許可証の名義は農家(申請者)になり、ハンターは従事者として記載される。
Pt2:申請の流れをステップで理解する──「捕獲の2週間前」が鉄則
捕獲を始めたい日から約2週間前までに、書類一式を窓口に提出することが求められる。これが最大の注意点だ。農家から「今すぐ来てほしい」と言われても、許可証なしに動くことはできない。だからこそ、農家との関係を事前につくり、「被害が始まる前に申請を済ませておく」段取りが理想的だ。
01
農家または自治体との事前確認
農家が被害を受けていることを確認し、「捕獲を依頼したい」という農家の意向を確認する。同時に捕獲対象の動物・被害を受けている場所・時期を整理する。この段階でハンターが農家に「被害写真を撮っておいてほしい」と伝えると後の申請がスムーズになる。
02
窓口(市区町村)への事前相談
捕獲を行う場所を管轄する市区町村の農林水産担当または環境担当に電話か窓口で相談する。「有害鳥獣捕獲許可の申請をしたい」と伝えるだけで、必要書類の一覧を教えてもらえる。豚熱の感染状況確認エリアかどうかも、この段階で確認しておくことが重要だ。
03
書類の準備と提出(捕獲希望日の2週間以上前)
必要書類を揃えて窓口に提出する。郵送可能な自治体も増えているが、狩猟免状の写しなど本人確認が必要なものは窓口持参を求められる場合もある。提出後は「受理証」が発行され、許可証は後日交付される。
04
許可証の受け取りと現場での携帯
許可証が交付されたら、捕獲活動中は必ず携帯する。わなや網などの据え置き型の猟具を使用する場合は、住所・氏名・許可者名・許可の有効期間・許可証の番号・捕獲対象の鳥獣名を猟具に表示しなければならない。これは狩猟期間中の標識義務と同様の考え方だ。
05
捕獲後の報告義務を必ず果たす
捕獲した個体数・日時・場所・処分方法を自治体に報告することが義務付けられている。特にイノシシを捕獲した場合は豚熱の防疫措置(消毒・検体採取等)が別途求められるエリアがある。許可期間終了後も未提出のまま放置すると、次回以降の許可に影響することがある。
📰 実際の申請事例:農家から個人ハンターへの依頼(長岡市の申請手続きガイドより)
新潟県長岡市の公式サイトによると、農林業被害の防止目的で、農林業者が自らの事業地内において囲いわなを用いてイノシシ・ニホンジカ等を捕獲する場合は、1日1回以上の見回りを実施するなど、錯誤捕獲等により鳥獣の保護に重大な支障が生じないと認められる場合、許可が下りる。また第三者(ハンター)に依頼する場合は依頼書の添付が必要で、申請書類一式の提出から許可証交付まで約2週間程度の審査期間が設けられている。
Pt3:申請書類の全体像──「何が必要か」を一覧で把握する
申請に必要な主な書類は、許可申請書(第1号様式)、従事者証交付申請書(第2号様式)、従事者名簿(別紙)、有害鳥獣捕獲依頼書(第4号様式、第三者に依頼する場合)、捕獲申請にかかる被害状況調査書(第5号様式)、狩猟免状の写し、猟銃所持許可証の写し(銃器を使用する場合)、ハンター保険の証明書などが挙げられる。これらに加えて自治体によっては被害写真・捕獲区域の地図・使用するわなの写真が求められることもある。
| 書類名 | 必要な状況 | 備考 |
|---|---|---|
| 許可申請書(第1号様式) | 全員必須 | 自治体のウェブサイトからダウンロード可。記載例も併せて確認する |
| 従事者名簿(別紙) | 複数人の場合 | 同じ目的・方法・場所で複数人が捕獲する場合に必要 |
| 有害鳥獣捕獲依頼書 | 第三者が捕獲する場合 | 農家がハンターに依頼する形をとる場合は必須。農家と連名で作成 |
| 被害状況調査書・理由書 | 全員必須 | どんな被害がどのくらい出ているかを具体的に記述。被害写真があると審査がスムーズ |
| 捕獲区域の地図 | 全員必須 | Google マップの印刷でも可。捕獲予定エリアを着色して示す |
| 狩猟免状の写し | わな・銃器使用時 | わなや銃を用いて捕獲する場合には、狩猟免許取得者にしか原則許可を出せない。 |
| 猟銃所持許可証の写し | 銃器使用の場合のみ | 使用する銃の所持許可証を添付 |
| わな・猟具の写真 | 据え置き型の場合 | 実物写真でもパンフレット等でも可。どんな猟具を使うかを示す |
| ハンター保険の証明 | 銃器使用の場合 | 自治体によっては求められる。確認が必要 |
Pt4:申請で絶対やってはいけないミス──現場で頻出の3つの落とし穴
ミス①:許可が下りる前に捕獲活動を開始する
「申請書を出したから大丈夫」と思って許可証交付前に活動を始めてしまうケースがある。申請書の提出と許可証の交付は別物だ。許可証が手元に届くまでは、捕獲活動は一切始められない。わなの設置も、捕獲のための下見も、厳密には許可証交付後に行うものだ。農家が急いでいたとしても、この点は妥協できない。
ミス②:豚熱感染確認エリアの防疫措置を怠る
現在、愛知県・岐阜県・群馬県など複数の県でイノシシの豚熱陽性が確認され続けている。農林水産省の指針によれば、捕獲従事者等による感染拡大防止対策として、豚熱感染症対策の徹底が求められており、捕獲個体の検体採取・消毒・報告などの防疫措置が義務付けられているエリアがある。申請段階で窓口に「このエリアで豚熱防疫措置は必要か」と確認しておくことが不可欠だ。
ミス③:捕獲後の報告書を出し忘れる
捕獲後に自治体への報告書提出が義務付けられているにもかかわらず、これを忘れたり後回しにしたりするケースは非常に多い。報告書未提出は法的には義務違反となりうるだけでなく、次シーズン以降の許可審査で「実績がない」とみなされる可能性もある。捕獲したらその日のうちに、少なくとも翌日中に記録をつける習慣をつけることが重要だ。
⚠️ 無許可捕獲の代償は重い
野生鳥獣を許可なく捕まえることは禁止されており、許可なく捕獲した場合は法により罰せられることがある(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。「農家に頼まれたから」「被害が出ていたから」は、無許可捕獲の免罪符にはならない。善意でも結果は同じだ。
Pt5:許可を取ってから初めてわかること
最初に有害捕獲許可の申請をしたときのことは今でも覚えている。「こんなに書類があるのか」と正直面食らったし、農家に「まず市役所に行ってください」と伝えたとき、農家の方も戸惑っていた。でも一度やってみると、次からは全部の段取りがわかって格段に動きやすくなった。
📝 私の視点
最初に申請したのは、農家の知人から「今年は特にひどくて、もう限界だ」と言われたのがきっかけだった。猟期が終わったばかりで「今さら何もできない」と思っていたが、有害捕獲許可の存在をあらためて調べて、申請に向けて動いた。一番困ったのは「被害状況調査書に具体的な数字を書かなければならない」という点だった。農家に「被害面積は?被害金額は?」と聞いても、感覚でしかわからないと言われた。それで農家と一緒に畑を歩いて、実際に踏み荒らされたエリアを測って写真を撮って、ようやく書類が整った。あの経験から「農家との事前の信頼関係が申請の精度を上げる」と実感した。
有害捕獲許可を取って動くようになってから変わったことがある。農家との関係が長期化したことだ。猟期中だけの付き合いではなく、年間を通じて連絡が来るようになり、農地の状況をリアルタイムで教えてもらえるようになった。これが翌猟期の準備にも直結している。許可を取って動くことは「副業の仕込み」でもあるし、「猟場情報の収集」でもある。一石二鳥どころか、もっと多くのものが返ってくる。
✅ 申請前に農家と確認しておく3点
・被害が発生している場所の地番または住所(地図に落とすために必要)。
・被害が始まった時期と現在の状況(調査書に記載する具体的な情報)。
・農家が捕獲個体の処分方法に同意しているかどうか(持ち帰り・ジビエ利用・現地埋設など。捕獲後の個体の処置を事前に決めたうえで申請することが求められている。)
まとめ──許可を取ることが、年中働けるハンターへの第一歩だ
有害鳥獣捕獲許可の申請は、難しくはない。必要な書類を揃えて、捕獲希望日の2週間以上前に市区町村の窓口に提出するだけだ。農家との事前確認、被害写真の準備、豚熱エリアの防疫確認──これを一度経験すれば、次からは格段にスムーズになる。
何より、猟期外も動けるという事実が、ハンターとしての存在価値を変える。農家にとって年間を通じて頼れるハンターは、猟期だけ動くハンターよりはるかに信頼される。そしてその信頼が、翌シーズンの猟場情報に返ってくる。
今年の猟期が終わったとき、ただ待つのではなく、有害捕獲許可の申請に向けて動いてみてほしい。まず地元の農業担当窓口に電話一本するだけでいい。そこから全部が始まる。
📋 猟期が終わっても、ハンターは動ける。許可を取ることが、地域を守る年中ハンターへの第一歩だ。
出典・参考資料
- 環境省「捕獲許可制度の概要」(許可権限者・許可基準)https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/capture1.html
- 東京都環境局「野生鳥獣の捕獲について」(申請書類一覧・依頼書の取り扱い)https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/birds/capture
- 大阪市「有害鳥獣の捕獲許可の手続き」(申請書様式・依頼書・調査書の詳細)https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000316758.html
- 沖縄県「有害鳥獣捕獲許可申請」(必要書類の全体像)https://www.pref.okinawa.lg.jp/shigoto/ringyo/1010900/1022714/1030508.html
- 長岡市「有害鳥獣の捕獲許可手続き」(申請書類・2週間前提出の明記)https://www.city.nagaoka.niigata.jp/kurashi/cate09/capture.html
- 浜松市「(野生)鳥獣捕獲等許可申請について」(銃器使用時の免許確認)https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/ringyou/shinko/forestry/chouju/choujuhokaku.html
- 千葉県「鳥獣の捕獲等許可」(法人申請の条件・審査基準)https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/tetsuzuki/650/14040-064.html
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル イノシシ・シカ・サル・カラス(捕獲編)」(許可捕獲の仕組み・個体処分方法の事前決定の必要性)https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/attach/pdf/8_old_manual-1.pdf
- 環境省「第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)改定版2021年3月」(豚熱防疫措置の義務・捕獲従事者の感染症防止対策)https://www.env.go.jp/content/900517216.pdf
- 農林水産省「豚熱(CSF)野生イノシシの感染確認状況マップ」https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/csf/csf_yaseichoju.html

